「就活するときにはそこまで気にしないけどいざ入社してみて問題があったらめっちゃ精神が削られる」ものって色々あると思います。
私の場合は、その上位に「開発環境」がランクインしたので、今回は大企業のSIerに勤めている身として、会社の開発環境がどうなっているかという話をしたいと思います。
開発環境が劣悪すぎて大手企業を退職している人が存在

ネットの退職エントリを見ていると、PCのスペックが低いとか、サービスが自由に使えないといった理由で退職している方をたまに見かけます。
俺プライド低いゴミクソだからさ
— ところてん (@tokoroten) June 14, 2018
「ところてん、お前プライド高いから会社辞めたんだろ」
せやった
「さくらインターネットが5分でできることが、なんで二ヶ月かかるんですか?クラウドやる気あるんですか」
って社内SNSで書いたら、上司から怒られたんで会社辞めたんだった。
ところてんさんがNTTを退職されたことに関するツイート。こちらの記事にもう少し詳しいことが書かれています。旧態依然としすぎてて、”歴史”のある企業はこんなものなのか…(絶句)という感想です。
続いてはこちら。
開発環境がだめ
まずこれがトップにくる。
本当にだめだった。多分開発させる気なんてなかったんだろうなあ。ニートでももうちょっといい環境を使っていると思う。
メモリ4GBのセレロン使ってた。もちろんSSDじゃなくてHDD。PCは富士通製のミドルクラスのノートPCしか支給されなかった。
Macなんか認めん!iOSアプリも富士通PCで作れ!(本当にあった話)。
5年いた富士通を退職した理由
私の会社はこれらの例まで酷くないですが、それでもWeb系企業に比べたら残念な部分が多いと思うので、「ここはちょっとな…」と感じた部分を書いておきます。
私の会社の実例【ソフトウェア編】

まずは、ソフトウェアや他社技術を用いる際の手続きなどについて実態をご紹介します。
前提:縦割りが激しく、部署によってかなり文化が違う
まず前提ですが、結構大きい企業なので縦割り体制になっており、部署によって適用されるルールが結構異なります。
基本ルールとしてはそこまで酷くないはずですが、部署が自由にローカルルールを決めている場合が多いです。ひどい部署だと社外に公開するときは使っているOSSやAPI等の安全性を全部証明しないと許さん!みたいな部署も存在し、そのような部署に配属されてしまった場合は地獄と化します。
ソフトウェアのダウンロードは全て申請が必要
縦割りになっているといっても、大体どの部署もソフトウェアのダウンロードには申請が必要です。申請方法は様々ですが、予め会社側で確認されたソフトウェアならば、ダウンロードした後に専用サイトで申請すれば使える、という運用方法が多いです。
承認されるまで待つ必要がないですし、申請自体にもそこまで時間はかからないです。
めんどくさいですが、申請自体はなるべく省力化しようという意志が感じられますし仕方ないかな…と思っている部分もあります。
ただし、社内で使われたことがないものを使いたい場合は社内の管理部門等に申請し、承認が下りてからしか使えないというルールなので、社内の中でも先端的なことをやっている方たちは発狂していそうです。
また、これらのソフトウェア管理はバージョンごとなので、新しいバージョンが出た時に誰かが申請・承認してくれない限り自分がめんどくさい申請をするか、古いバージョンを使うかの2択に迫られることがあります。
ちょっと分析に使いたいな…みたいなツールを落とすときに「これいつのだよ!」みたいなバージョンしか承認下りてなくて、渋々その古いバージョンを使ったことが何回かあります。
開発に必要なソフトウェアで違反警告が出て、毎回揉める
PCには検出ツールみたいなものを入れるのが強制されているため、PCにインストールされているソフトウェアは全て分かるようになっています。
そして、今までは何も出てこなかったけど、ある日突然警告が出てくることがあります。
バージョンを上げたり下げたりアンインストールしたりなどすれば良いのですが、開発にそのバージョンが必要な場合や、依存パッケージとかが多くて対処できない場合が結構な確率で存在します。そのような場合は大体下っ端が社内の管理部門へ連絡し、調整しなければならなくなります。
クラウドは使えるが、申請に時間がかかり、面倒
AWSやGCPなどのクラウドは一応使うことができますが、申請がめっちゃ大変です。
システムを社外に公開するか否か、社内NWに繋ぐ必要があるかなどで大変さは異なりますが、アカウントの申請、VPNやWebプロキシの申請に数日~数週間はかかります。
本格的にシステムを構築するときや顧客のデータを入れる時に諸々の申請が必要なのはまだ分かりますが、開発環境の検討をちょっとやってみたい、といった時にもこういった申請が一々必要なため、かなり面倒だな、というのが正直な感想です。
私の会社の実例【コミュニケーションツール・社内環境編】

ソフトウェアや技術面の他に、インフラやコミュニケーションツールなどがどうなっているかについてご紹介します。
依然としてメール中心、チャットツールのリテラシーが低い
社内のコミュニケーションは、コミュニケーションツールは誰でも使える状態にも関わらず、メールが中心の部署が多いです。
全体的に徐々に使われるようにはなってきているようなのですが、複数の部署で仕事をするときにメールが中心の部署が1つでもあるとそこに寄せてメールで連絡しなければいけなくなるので、各部署だけの問題ではないのが難しいところです。
私の部署では依然としてメール中心で、コロナでリモートが始まる時ですら、これらの運用が検討されることはなかったため、在宅の際のコミュニケーションコストが無限大になりました。チャットで気軽に連絡できる時代は一体いつ来るのか、気が遠くなります。
また、ちゃんと全社的にチャットの運用ルールの制定とかドキュメントを作るとかすれば良いのにそれをしないため、移行段階でトラブルが起こりやすいみたいです。しかも使い方分かってないのが大体年次の高い方で、スレッドを変に立ち上げたりチャンネルの理解が及んでいなかったりでめちゃくちゃになって大変、と営業の同期が愚痴っていました。
PCのスペックは低い
PCのスペックはオプションで色々つけられるため、上で紹介した富士通の退職エントリほど酷くはないですが、性能に不満を抱える人が多いです。
開発の人はデスクトップPCが貰えることがあり、それなら不自由はしませんが、シンクライアントのノートPCで開発をしなければいけない場合もあり、この場合はかなり重くなります。
AWSのタブで3つ目を開こうとすると強制終了する同期とかいましたね。
社内サイトがIEでしか開けない
これが当てはまる会社は多そうだと想像していますが、個人的に地味にイライラするポイントです。
他のネットサーフィンに関してはFireFoxをインストールして使っていますが、社内ネットワークにアクセスしたい時はIEを使う必要が生じますし、事務手続きもIEでやる必要が生じます。
社用携帯のアプリも厳しくチェックされる
社用携帯に何をインストールしたかも逐一チェックされています。
個人的に困ったこととしては海外とやり取りするときに必要なチャットアプリが禁止アプリに指定されており、これもわざわざ別で管理部署に申請したりしないといけないことです。
管理するのは仕方ないこととしても、もう少し柔軟な運用方法を考えてほしいなと思っています。
環境構築の制限・煩雑さは解消できるのか?

新しい技術を導入することは難しい
SIerは取り扱っているものが社会のインフラっぽいものもそこそこあり、一度障害を起こしたら新聞に載ってしまうレベルのものがあるため、新しい技術に対して保守的になる=ソフトウェアについてもしつこく安全性を担保する、という姿勢になるのは仕方ないかなと思っています。
「一体何%の確率で問題が起こるって言うんだ」、「どんだけ審査に時間掛けてるんだよ、広く世間で使われてるよ…」みたいな気持ちになることもあります…。ここらへんはコストとリスクのトレードオフで、これをどこまでやるかみたいな話には正直あまり関わりたくないですね、管理してる方たちも大変そうです。
そもそもほとんどのSEがこれらを問題としていない
そもそもですが、元請けのSEが実際に手を動かして開発することってあまりないです。やるとしても、最初に下流工程を学ぶぞ!という方針になっている一部の若手くらいのものです。
上記のように新しい管理ツールを使うモチベも低いため、9割のSEが使うのはエクセル・パワポ・ワードくらい、開発部署でも加えてどこかの管理画面を少し覗くくらいです。
その場合、申請が煩雑、PCのスペックが低い、などで開発環境が劣悪で困るのは一部の若手や、パートナー企業の方(これらのルールが適用される契約の場合)のみになっています。
彼らにこれらのルールを変える権利はありません。
結論、「まあこんなもんなんか」という感じで今までずっとこういう運用が続いてきた気がしますし、変えようとする人がいないままずっと続くのではないかと思っています。
SIerの仕事内容については以下の記事でも詳しくご紹介しています。
仕事内容や求められるスキル、どんな人に向いているかが知りたい方は是非ご覧ください。

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