『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』の要約・企業比較

書評

こんにちは。
『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』を読み、米中メガテックのビジネスモデルやビジョンが整理できて面白かったので、内容や読んで考えたことをまとめます。

田中 道昭 (著) 日本経済新聞出版 (2019/4/10)
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この本に書かれていること、書かれていないこと

孫子の「5ファクターメソッド」で米中メガテック8社を分析

この本は簡潔に言うとGAFAとBATHの米中メガテック8社の比較分析を行っている本です。

米中メガテックは巨大であり、既存のフレームでは全体像を押さえきれないとして、筆者は孫子の兵法の「五事」である「道」「天」「地」「将」「法」を現代の企業経営戦略にアレンジし、この切り口でそれぞれの企業を網羅的に分析しようとしています。具体的には、以下のようにアレンジされています。

  • 道:企業としてどのようにあるべきか(ミッション)
  • 天:外部環境を踏まえたタイミング
  • 地:地の利(業界構造、競争優位性など)
  • 将:リーダー
  • 法:マネジメント

このフレームワークに乗っ取り、米中メガテックのそれぞれに関してミッションやビジネスモデル、リーダー、組織の特徴の解説がなされています。

解説の難易度としては、基本的なところから解説がなされており、予備知識がない方が読んでも分かりやすく、各企業の違いが整理できるようになっていると感じます。(具体的な内容は後ほど詳しく解説します。)

8社の比較、位置づけの整理

上記の「5ファクターメソッド」で各企業の特徴は大体つかむことができますが、さらにROA(総資産利益率)や営業利益率をもとにもう一段階分析を行っています。これらの数値には新規投資をどれだけ行っているかや事業ドメインの幅広さが反映されることから、表にまとめられており、定量的に比較するすることができたのは分かりやすかったです。

米中メガテックを取り巻く環境は詳しく書かれていない

本書では、米中メガテックを取り巻く環境として法規制等の逆風や米中の分断等に軽く触れられています。ただし分量としては十数ページです。

米中メガテックをとりまく外部環境(例えば、国家/法規制/社会などのPEST分析)のリスクやそれを踏まえた今後のビジネスの展望は深いテーマですし、状況が日々刻刻と変わるため、この辺りが知りたい方は別途情報収集が必要かと思います。
この本はあくまで8社の現在の会社の分類や比較が中心という印象でした。

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この本をオススメする人

誰が読んでも面白い本だと思います。この本にも書いてありましたが、今の我々の暮らしやビジネスはGAFAやBATHをなくしては成り立たないと思うからです。

難易度としても、消費者として名前を知ってるくらいの方やITに詳しくない方にも分かるように解説されていると感じます。5ファクターメソッドによって8社を多くの切り口から分析しているため、何かしら新しい発見があると感じますが、これらの企業群に詳しい方はもしかしたら知っていることが多いかもしれません。

私が読んだ時は情報自体は知っていることが結構ありましたが、断片的な情報が多かったため、この本を読んだことによってそれぞれの企業の特徴が整理され、比較が出来るようになったと感じます。

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内容の要約【GAFA×BATHの比較】

8社に関して事業内容+前述の5ファクターが説明されており、全て書くのは難しかったため、私が印象に残った各企業の特徴をメモします。かなりざっくりまとめているので気になる方は是非この本を読んでみてください。

Amazon

  • 「地球上でもっとも顧客至上主義の会社」をミッション、ビジョンとしている
  • Amazonの進化は、①顧客第一主義 ②高度化するニーズの対応 ③大胆なビジョン×高速PDCAで成り立っている。

Alibaba

  • 「社会的問題をインフラ構築で解決する」という大義があり、中国のためや世界をより良い国へするためといった発言をしている
  • 社会問題解決の象徴的な一例として、家族経営の零細小売店のデジタル化を手掛けている。自力で時代の変化に追いつけない経営者やその利用者である地方都市の人々をサポートしている。
  • 2016年に「ニューリテール」というコンセプトを発表、今後10~20年でオンラインとオフラインの統合(OMO)が台頭すると語った。
  • 中国政府から「都市のAI化」を委託された。

Apple

  • ミッションを明示していないが、ブランド観は明確。「自分らしく生きることを支援する」ことへ強いこだわりを打ち出している。
  • 顧客のプライバシーを重視し、個人データの利活用をしないことを明言している。金融サービスや医療サービス等との連携が増えていくことが予想され、信用力がより重要となってくる昨今ではこの姿勢を再評価する動きが出てくる可能性がある。

HUAWEI

  • 「あらゆる人、家庭、組織にデジタル化の価値を提供し、すべてがつながったインテリジェントな世界観を実現する」ことを「明確なビジョンとミッション」として掲げている。
  • 強さの秘密は毎年売上の10%以上を継続して研究開発に充てていることで、アップルやトヨタの研究開発費を上回っている(2017年)。「世界最先端」と呼ばれる技術力がある。
  • 「デジタルディバイドの解消」として多くの開発途上地域や遠隔地に製品やサービスを提供してきた。
  • 独自の社員持株制度、輪番CEO制度、ファーウェイ基本法という独自の制度が存在する。

Facebook

  • 2017年に「人々にコミュニティーを構築する力を提供し、世界の繋がりを密にする」というミッションに変更
  • 「ハッカーカルチャー」の文化があり、「クリエイティブな問題解決と素早い意思決定に報いる環境」だと説明している。

Tencent

  • 「インターネットの付加価値サービスによって生活のクオリティを向上させる」というミッション
  • SNSで獲得したユーザーに対して幅広いサービスを展開する、「テクノロジーの総合百貨店」で、特にコミュニケーションアプリによる顧客接点の多さを活かして「ミニプログラム」等で経済圏を拡大させている。
  • 中国政府から「AI×医療画像」を国策として受託している。また、「AI×自動運転」にも力を入れている。

Google

  • ミッションは「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセス出来て使えるようにすること」であり、アルファベットのミッションは「あなたの周りの世界を利用しやすく便利にすること」
  • Googleは「10の事実」を掲げており、これらが事実となるように努めているとしている。

Baidu

  • 検索サービスやその後の事業展開に関して、Googleと酷似している。
  • 「テクノロジーによって複雑な世界をシンプルにすることを目指す」ことをミッションとしているが、具体的に目指していることが分かりにくい。ビジョンは「人工知能でトップに立つ」こと
  • 中国政府から「AI×自動運転」を国策として受託しており、自動運転車の量産化、収益化に最も近い企業であるといえる
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まとめ

8社のうち、ほとんどの企業がどのような世の中にしたいかというビジョン/ミッションが明確にされており、事業内容と結びついていると感じました。私の企業もミッションetc.はありますが、「どのような社会を目指しているか」や「自分たちがそのために何をしようとしているか」が分かりにくいですし、内部の規律精神チックなものが先にきていたりしていて性質が少し違うものだと感じました。(会社透けませんように。)
ビジョンがしっかりしてる会社で働きたいですね。

上に述べた通り米中メガテックのミッションや事業内容が分かりやすくまとめられているため、この本を一読すればこの8社に関連する日々のニュースを把握しやすくなりそうです。読んでよかった一冊でした。

田中 道昭 (著) 日本経済新聞出版 (2019/4/10)

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