2003年発売で400万部以上を売り上げた大ベストセラーである『バカの壁』(養老孟司 著)を今更ながら読んでみたので、気になった部分を感想を書いていこうと思います。
『バカの壁』の構成とおすすめする人

『バカの壁』の目次
目次は以下のようになっています。「バカの壁」のことを一冊にわたって語るというよりも、それに関連する作者の思想が多めに詰まっている本です。
(この著者の本は大体そうな気がしています。)
- 第1章 「バカの壁」とは何か
- 第2章 脳の中の係数
- 第3章 「個性を伸ばせ」という欺瞞
- 第4章 万物流転、情報不変
- 第5章 無意識・身体・共同体
- 第6章 バカの脳
- 第7章 教育の怪しさ
- 第8章 一元論を超えて
この本をおすすめな人、そうでない人
「バカの壁」は、人間には「わかったつもり」の思い込みが存在し、知りたいと思ったことしか理解できない(脳に入力されない) という話なので、新しい環境で何かを学び始めた人や、部下や後輩に何かを教える立場になった人が向いているのではないかと思いました。
ただし、すぐに悩みを解決できる実践書というわけではなく、「伝える」/「考える」ことがどういうことかに関して作者の感覚を集めた本なので、俯瞰的な視点で考えてみるのに向いている本です。
『バカの壁』の内容
読んだ中で印象に残った部分を簡単にまとめていきます。
『バカの壁』とは?
- 自分が知りたくないことに関しては意図的に情報を遮断してしまっている。
- 自分で「知っている」と思い込んでいると情報を遮断してしまいやすいが、実際はその前提となる当たり前のレベルは異なっているし、「分かっている」と知識があることとは異なっている。
脳の入出力
- 脳は、入力をx、出力をyとすると、y=axの係数aのようなものが存在し、人や入力によって値が異なる。その入力を現実として捉えているかによって変わるし、感情についてもこの一次方程式のモデルが当てはまる。
『バカの壁』が生まれた背景
『バカの壁』が生まれることになった背景として、現代の暮らし方や共同体のあり方、教育などについても筆者は触れている。
以下のような背景から思考停止になって唯一無二の絶対的な考えがあると思い込んですがったり、わかったつもりになると論じている。
- 「都市化」によって、身体を使った出力をおろそかにしている
- 近代化によって共同体の基盤を失い、よりどころを失っている
『バカの壁』を読んだ感想
仕事にどう活かせるか
作ったドキュメントのレビューから仕事のやり方まで、上司に指摘をもらってもなかなかイメージが擦り合わなくて繰り返し怒られることを繰り返しているので、一次方程式の係数の話などは割と納得しました。
(係数を0にしているつもりはないのですが…)
指示の出し方が結構高次元な上司なので、最近は仕事しているときは「結局、人は自分が理解している枠組みの中でしか物事を理解できないんだよな…(指示が理解できない…)」みたいな半ば諦めムードではあったのですが、もちろんほとんどは私のほうに原因があるし、「わかったつもり」になって改善できていないことが多くあるなと反省しました。
具体的には、以下のようなことです。
- 言われたことを字面だけ受け取って、その背景や改善してほしい理由を想像しない
(このことにより、一次方程式の係数が結構少なくなってしまう) - 指摘されたことをその場で理解したつもりになっても、実践して習慣化することができない
面白かったか、そうでないか
章構成としては、冒頭の1~2章目が「バカの壁」にかなり詳しく触れている一方で、後半は現代社会の暮らし方の批判っぽくなっていましたね。
こういう新書っぽい書き方はこの筆者の特徴だとは思いますが、高校時代の国語の現代文っぽい…。したがって、自分の暮らしを見つめなおしたり、そのような背景に対して何ができるのかなどを考える必要があります。
さらに、「バカの壁」が存在することは書かれていましたが、それをどう解決するか = 「わかったつもり」の思い込みを改善する方法は書かれていない ので、具体的にどう改善していくかは、各々考える必要がありそうです。
「バカの壁」が存在することを認識し、「わかったつもり」になっていないかを内省することが非常に重要なことだと思うので、教養として読んでよかったなと思えた一冊でした。文庫本でそこまで重くなく、文体もそこまで固いものではないので、手に取りやすいと思います。
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