SEとして働いて周りを見て思ったことを書くとりとめのない雑記回です。
コロナによって自社に勤務する社員は原則在宅勤務、お客さんも厳戒態勢で在宅の中なぜかそのビルに客先常駐SEだけが出社し続けてるみたいな話を書こうと思っているけど…
— はる (@G0LsuDC6I21PxO7) March 26, 2020
客先常駐のSEは在宅勤務できない!?
新型コロナウイルスによって広がる在宅勤務
政府の新型コロナウイルスの感染症対策の基本方針により、時差出勤やテレワークが推奨されるようになりました。これによって、多くの企業がテレワークを実施・導入しています。
真っ先に在宅勤務の対応を行い、話題になった企業はNTTでしょうか。
上記の基本方針が出されたのは2/25ですが、NTTがテレワークの実施を始めたのは17日ですので、政府の推奨なしで、政府の対応よりも1週間以上前に始めたことになります。
日経新聞:『NTT、新型肺炎でテレワークなど推奨 最大20万人』
制限が発生する客先常駐SE
ただし、自分の会社がどんなに大企業でどんなにホワイトでも無条件に在宅勤務ができない職種があります。客先常駐のSEです。
客先常駐のSEが在宅勤務ができない理由として、大きく大別すると2つの原因があると思います。
- 環境上の問題
- 契約上の問題
以下で解説していきます。
日本IT業界にはびこるITゼネコンの構造
そもそもなぜ客先常駐という悪しき風習が生まれてしまったかについてですが、大金が動く大型のシステム構築案件はいわゆる大手SIerが寡占しています。
大企業や官公庁が、大企業である大手SIerに発注を行うことで大金が動く仕組みです。
これで日本のIT業界のほとんどが成り立っています。
多くの人月が必要な大規模プロジェクトなので、受注した大手SIer=プライムベンダーだけで構築するわけではなく、グループ会社をはじめとする二次請けに発注を行います。彼らが更に下請けに作業を発注することもありえます。
その際に
- 大手SIer(いわゆるプライムベンダー)が顧客先に常駐することがありますし、
(例:(大手SIer)が○○銀行に常駐) - プライムベンダーによって発注された2次請け、3次請けがプライムベンダーの拠点で開発することもかなり多いです。
(例:デー子がN〇Tデ〇タで開発、など)
このようにして客先常駐が発生します。
大手SIerは顧客調整とマネジメントが本業であり、工数(=人員)が必要な開発や運用保守はほとんど下請けに発注を行うので、拠点にプライムベンダーの方が少ないことが珍しくないです。
ちょうど分かりやすい資料があったので引用させていただきます。

出典:総務省『働き方改革のためのテレワーク導入モデル』H30年6月 p.27を抜粋
テレワークができない原因①:環境による制限
ではなぜ客先常駐が発生するのかというと、回線を引いている拠点でしか作業ができないとか、コミュニケーションを取るために常駐してくれとか、そういう理由になります。
そこそこの規模のシステム案件であれば顧客やプライムベンダーは何社にも発注を行います。それら全ての会社をマネジメントするためには、拠点に全社のプロジェクトメンバーを集めた方が効率的です。
また、受注した会社同士の横の連携も重要です。
これらの理由を鑑みると、新型コロナウイルスが流行ったから全社在宅勤務にできるかと言われれば難しいのが現状です。
そもそも環境につながらなければ仕事ができないですし、在宅勤務のコミュニケーションのコストは明らかに上がります。プライムベンダーも下請けも守るべき納期や満たすべき品質がありますしいわば銃口を突き付けられている状態です。燃えても誰も責任が取れません。
テレワークができない原因②:契約による制限
準委任契約=SESという、特定の業務に対して技術者の労働を提供するという契約があります。
全く良い噂を聞かない例のやつです。
この場合、SESの発注側には労務管理する義務はなく、技術者の会社の管理職は別の場所にいるため、充分に管理できません。
原因①に書いたように、環境の制限でテレワークができなかったり、テレワークを行うとコミュニケーションコストが上がって生産性が落ちたりする場合があります。
「従業員の安全のためにテレワークしてもいいですか?」と受注側に頼まれても、発注側は生産性低下を許容して応じてやる義務はないわけです。
参考にさせていただいたブログ:
『労務管理上宙ぶらりんになりがちな客先常駐IT技術者と、コロナウイルス対策』
ただし、そのような発注側も自社の従業員の労務管理は行います。
上記の例で言うと、大手SIerを常駐させている銀行は自社の勤務管理は行いますし、子会社を自拠点に常駐させている大手SIerは自社社員の労務管理は行います。
結果、顧客が在宅勤務である一方で、客先常駐SEだけが出勤しています。かわいそう。
もともと上記に書いたとおり、顧客の拠点でのシステム構築を大手企業が大手SIerに発注していますし、プライムベンダーは、人員が必要な開発や障害対応を下請けに出しています。
客先常駐している側が発注している側よりも専門知識が必要な業務を行っており、それは客先常駐でなければならない環境(回線とかです)を使うことが多いことを意味します。
まとめ
客先常駐は、自分の会社がどんなにホワイトで在宅勤務を進めてくれる優良企業でも顧客がブラックだったら制限が発生し、ホワイト企業に就職した意味がなくなってしまうのです。SE業界に就職を考えている方や転職希望の方に危なさを知って欲しいです。
客先常駐やSESは元々ブラックなことが指摘されていましたし、これを機に枠組みが改善されることを期待します。
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